フレンドリーでハートウォーミングな安来で、異国からやってきた私たち家族は自分たちらしい暮らしを築いています。
プロフィール

ギニアから移住
ママディ・ドンボウヤさん
ギニアに生まれ育つ。2021年、島根大学大学院の修士課程へ入学するため、JICAを通して来日。
来日後は島根大学大学院自然科学研究科に在籍し、「小豆栽培の湿害条件下における窒素施肥の効果」を研究テーマとして、フィールドワークをメインに取り組む。
2023年に修了後、安来市伯太町にある「わたなべ牧場」へ就職。
現在は同牧場にて、ジュニアプロダクションマネージャーとして、主にヨーグルト、プリンの製造をメインに、牧場業務全般も行う。その傍らでギニア企業と同牧場の貿易取引を実現するプロジェクトを進行中。
安来に移住したきっかけ

来日時は大学近くのアパートに住んでいました。
2022年からわたなべ牧場のアルバイトとして週1回、松江市から牧場のある安来市伯太町まで通っていましたが、通勤時間をとても長く感じていました。
大学院の修士課程修了後、わたなべ牧場に就職することになり、通勤時間短縮のために安来市へ移住することにしたのです。
安来に来て感じたこと
安来は穏やかで落ち着いた街。程よい利便性もあり、暮らしていくうえで困ることは何もありません。
人々の優しい笑顔に触れるたび、心が温まりますね。フレンドリーでハートウォーミングなこの場所は、私にとって第二の故郷とも言えるものとなっていて、その愛着は、2024年にギニアから家族を呼び寄せて以来、日に日に深まっていくばかりです。
ご家族を呼び寄せることになったときの反応は?
仕事を得たこともあり、私はギニアで待つ家族の元へ一度帰りました。
「日本で一緒に暮らそう」という言葉を伝えたときの家族の反応は、今でも鮮明に心に残っています。
妻も子どもたちも、その言葉に目を輝かせながら喜んでくれました。子どもたちにとって「日本へ行く」ことは、きっと楽しい旅行のような感覚だったのでしょう。そんな喜びに溢れた顔を思い出すと、今でも微笑ましい気持ちになります。
言葉の壁についての不安はありましたが、子どもたちの適応力を信じてもいました。
実際、日本でできた友だちと一緒に過ごすうちに、親である私たちが驚くほどのスピードで、新しい言葉を吸収しています。
その一方で、妻はまだ日本語を話すことはできませんが、それも私たち家族の成長過程のひとつなのだと思います。
家族と過ごす安来での暮らしは?

毎週金曜日と日曜日が私の休日ですが、妻が働いていることもあって、家族が揃う休みはとても貴重。だからこそ一緒に過ごす時間は何よりも大切なものとなっています。
ゲームセンターで子どもと一緒になってレースゲームに熱中したり、バスケットボールゲームを楽しんだり。そんな何気ない時間が、かけがえのない思い出として心に刻まれています。
また、私たち家族はイスラム教徒です。イスラム教徒にとって、食事に関する戒律(ハラール)は、生活の重要な一部だと言えます。ありがたいことに、島根モスクや安来の地元スーパーでも、ハラール食品や一部の外国産食材を手に入れることができます。
休日にはセンターで礼拝も行えますし、異なる文化の中で、その違いに触れながらも、私たち家族は安来で自分たちらしい暮らしを築けています。
現在の状況 (仕事や活動など)

わたなべ牧場との出会いは、モロッコ人の親友がもたらしてくれました。
彼に誘われて巡ったうちのひとつがわたなべ牧場であり、この出会いが私の人生において大きな転換点となりました。
私自身、もともと抱いていた貿易の夢を実現するため、日本企業のシステムを学びたいという思いがありました。同時に故国の農業発展をさせたいという思いもあり、その両方を叶えるための力を付けるには、この道を選ぶしかないと感じたのです。そこで就職を前提に週1回のアルバイトとして働き始めました。
今の日々は、夢への確かな一歩を進み続けるものとなっています。
ヨーグルトやプリンなどの乳製品製造を中心に、牛の世話や、牧場に係るデータ入力、さらには牧場で行っている米作りと、多岐にわたる業務の一つひとつが、新しい学びになっています。
時間管理の技術を磨き、多様なスキルを身につけながら、生産性の向上に携わる。その一つひとつの経験が私の成長につながり、未来へと続く重要な礎になっていると感じています。
今後の活動
わたなべ牧場の社員としてより一層励んでいきたいと思いますが、同時に日本とギニアを結ぶ架け橋となれるよう、この手でできることから一つずつ丁寧に積み重ねていこうと考えています。
その一つが今進めているギニア企業とわたなべ牧場との貿易取引プロジェクトです。
これは、商品や製品の取引のみならず、ノウハウやスキルのやりとり・・・具体的にはJICAを通して意欲ある人材を呼び寄せ、日本の先進的なシステムを学んでもらうということも考えています。そこで培われた知識が、いつかギニアの大地に新しい芽を育むことへつながると信じています。
実は心の奥では、いつかギニアに自分の牧場や農場を持ちたいという夢もありますが、それは一朝一夕でなし得るものではありません。
まずは地道な貿易を通じて、日本やその過程で出会う一つひとつの縁を紡ぎ、信頼関係を築き上げていくことが必要だと考えています。
見る人によっては、遠回りだと言われるかもしれません。でも、この道こそが、私の描く未来への確かな一歩なのだと信じています。
移住を検討中の方へメッセージ

この街で最初に触れたのは、人々の温かさでした。
特に行政の方々の心のこもったサポートは、私の心に深く刻まれています。
外国人という不安を抱えて市役所を訪れた日、そこで出会ったのは、まるで古くからの知人のような親しみやすさでした。「外国人だから」という壁を感じることは一度もなく、むしろ新しい家族を迎えるかのような対応に、胸が熱くなったものです。
一つひとつの相談に丁寧に耳を傾け、時には私の不安に寄り添い、時には新生活へのアドバイスをくれる。そんな心強いサポートのおかげで、私たち家族の新しい暮らしの第一歩は、想像以上にスムーズなものとなりました。
安来は可能性に満ちています。移住を考える人にとって、この安来という場所は、最高の選択肢となるはずです。多様な文化や価値観を持つ人々が集い、互いを認め合い、高め合っていく。そんなコミュニティの一員として、新たな移住者を迎えられる日を、心から楽しみにしています。