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無医地区だった生まれ故郷の広瀬町布部に貢献したいと考え、Uターンして診療所を開設しました。

プロフィール

Uターン

やすぎぐらし歴3年|東京都から

中西敏雄さん

東京女子医科大学循環器小児科教授を退任後、平成29年1月に故郷の広瀬町布部で診療所を開業。

安来市広瀬町布部出身。
島根県立松江北高等学校を卒業後、広島大学医学部に進学。
卒業後は東京女子医科大学で循環器小児科教授として長年活躍。

平成27年3月に退任し、特任教授を務めながら平成29年1月に故郷の布部で診療所を開業し地域医療に貢献。
家族は医師の妻と1男3女。長男と長女もそれぞれ医師として活躍。

※2019年3月取材

循環器小児科医を志す

診療所「ドクター中⻄元気クリニック」

私は高校生の時、病気やケガで苦しんでおられる方の役に立ちたいという思いから医師を目指し、医学部に進学しました。
広島大学医学部を卒業し研修医として勤務していた頃、循環器医療に興味を持ち、当時はまだ珍しかった循環器小児科を志すことに決めました。

昭和51年、東京女子医科大学で循環器小児科医として勤務を始めましたが、その1年後、アメリカ留学の話があり、昭和52年からカリフォルニア大学ロサンゼルス校の循環器小児科に5年半留学し、臨床と研究に取り組みました。

帰国後は再び東京女子医科大学に戻り、その後退任するまで循環器小児科の専門医を務めました。
大人と違って小児の患者さんは生まれつきの循環器異常が多く、子どもの小さな心臓を治療するのは大変難しく緊張の連続でした。しかし、誰かがやらなければならないので、どんなに難しい状況でも誠実にできる限りの手を尽くすことを大切にしてきました。

私は、カテーテル治療が専門で、手術が必要な場合は、私の診断に基づき外科医師と共同で治療を行います。
当時は、小児の循環器治療ができる病院が東京にしかなく、島根県からもたくさんの患者さんが来ていました。退任するまでに私自身で1万人以上の患者さんの治療を手掛けました。

現在のお仕事の状況は

東京女子医科大学時代は昼も夜もない状態でしたが、退任後は自由な時間が増えました。そこで、何か新しいことに挑戦しようと考え、生まれ故郷の布部が無医地区であることから、布部に診療所を開いて故郷に貢献したいと考えました。両親が亡くなって空き家となっていた実家に、平成29年1月、診療所「元気クリニック」を開業しました。
今は毎月第2・第4の金土日月曜日に開院しており、全ての診療科目を診ています。また開院日には診療所に来られない高齢者のお宅に往診もしています。

妻は、出身が広島県呉市ですが、私が現役中は毎年家族で盆と正月には必ず布部に帰っていたことから布部に愛着を持ってくれており、ここで診療所を開業することに賛成してくれました。また子ども達も、幼い頃から山や川で遊んだ楽しい思い出の地なので、とても喜んでくれました。

現在、妻はまだ医師として東京で働いていますが、時々はこちらに来ています。また、医師をしている長男が、昨年まで島根大学医学部に勤務していたので、度々診療所を手伝ってくれました。今は東京に帰りましたが、年に数回は手伝いに来てくれます。

もう一つ布部で取り組んでいることは、農業です。元々実家は農家でしたが、若い頃は農業を手伝ったことがありませんでした。しかし、今は農業に興味があり、両親が亡くなって耕作放棄地となった農地で農業を始め「ドクター中西オーガニックファーム」と名付けました。せっかく農業をやるなら安全でおいしい野菜を作ろうと考え、有機的な栽培に挑戦しています。肥料も牛糞や鶏糞に山で採ってきた落ち葉を混ぜた堆肥を自分で作り使っています。色々な野菜を栽培していますが、特にニンニクと自然薯はネットを利用して販売もしています。

布部での生活に加え、現在はまだ東京で研究と診療の仕事を続けながら、全国各地の講演会に呼ばれたり、海外の医療援助に出かけたりと、忙しい毎日を送っていますが、自分がやりたいことをやっているので、現役の頃に比べればこれでもゆったりと過ごせています。

今後の抱負は

様々な野菜が栽培されている農場

現在診療所は一人でやっています。看護師も事務員もいませんし、薬も私が出しています。将来は、診療所の開設時間をもっと多くしたいです。また、一人ぐらしの高齢者の方も増えていますので、在宅患者さんへの診察も増やしていきたいです。

もうひとつの夢は自分で育てたブドウでワインを作ることです。ビニールハウスを建て今年からブドウの栽培を始めました。まだ規模が小さいですが、もっと規模を拡大して2、3年後にブドウの収穫ができるようになればワイン作りに挑戦したいと思い、今から楽しみにしています。

これから移住を考えておられる方へ

私は全国各地へ講演に行きます。その土地土地によさはありますが、私は安来が一番良いところだと思っています。
雪が降って冬は厳しいこともありますが、魚は美味しいし野菜も美味しい。自然も豊かで子どもも小さい頃はこちらに来ることをとても楽しみにしていました。

しかし、そんな安来の良さを感じるにはやはり生活が安定することが必要だと思います。経済的に安定しないと移住しても不安があると思います。
生活の糧を得る手段をしっかり考え、安定した生活が出来るかどうかを見極めることが大切だと思います。
選択肢はいろいろあると思いますが、自分がやりたいことをしっかりと見つけ、安来の魅力を存分に感じていただきたいです。

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